不動産仲介会社のM&Aでは、免許証の有効期限だけを見ても営業継続は判断できません。免許は法人、事務所、専任の宅地建物取引士、役員等の状態と結び付いています。譲渡後の法人と拠点を先に描き、進行中の媒介・売買契約、営業保証金や保証協会の手続きまで一つの工程にする必要があります。
譲渡手法で免許の受け皿を判定する
| 論点 | 株式譲渡 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 営業する法人 | 既存の免許法人が存続 | 譲受法人が営業 |
| 免許 | 通常は同じ法人の免許 | 譲受側の免許を確認・取得 |
| 変更対応 | 役員、商号、事務所等の届出 | 新規・変更手続きと開始時期 |
| 案件 | 同じ当事者でも支配変更条項を確認 | 契約移転・再契約・承諾を確認 |
株式譲渡でも買い手がそのまま免許を「取得する」と捉えるのは正確ではありません。免許を持つ法人の株主が変わる形です。事業譲渡では免許が事業資産として当然に移るわけではないため、営業空白を生じさせない日程を許可行政庁へ事前相談します。スキームの基本は住宅会社の株式譲渡・事業譲渡比較も参照してください。
事務所と専任宅建士を同時に確認する
宅建業を営む事務所には、業務に従事する者五人に一人以上の割合で専任の宅地建物取引士を置く必要があります。人数だけでなく、常勤性、他社との兼務、実際の勤務地、異動・退職予定を確認します。代表者交代や統合で本店・支店の位置が変わる場合は、大臣免許と知事免許の区分、事務所要件、標識・帳簿・報酬額掲示などの運用にも影響します。
人員・拠点一覧の列
- 事務所名、所在地、免許上の区分、賃貸借期限
- 従事者数、専任宅建士、登録番号、証更新日
- 政令使用人、代表・役員の変更予定
- 店舗統合の有無と、顧客対応を切り替える日
- 必要な変更届、提出先、責任者、提出予定日
許認可を含む売却準備の抜け漏れは住宅会社売却前チェックリストで横断確認できます。
進行案件を「契約の鎖」で追う
案件一覧には、売主・買主・貸主・借主、媒介区分、媒介契約期限、重要事項説明、手付金、決済予定、報酬請求、広告掲載、鍵・本人確認書類の保管を記録します。事業譲渡では顧客との契約上の地位を移せるか、相手方の承諾が必要かを一件ずつ確認します。株式譲渡でも、フランチャイズ、ポータル、業務提携、賃貸借、金融機関契約のチェンジ・オブ・コントロール条項は見逃せません。
個人名や物件詳細は初期候補へ出さず、地域、種別、媒介段階、想定報酬を匿名集計します。段階開示の設計は匿名資料と秘密保持の実務が参考になります。
営業保証金・保証協会・預り金を分ける
供託か保証協会加入か、支店分担金、弁済業務保証金分担金、廃業・免許換え時の手続きを確認します。これらを通常の運転資金と同じ現預金として扱うと、株式価値や必要資金を誤りやすくなります。
手付金や家賃等の預り金、精算前の固定資産税、広告費立替、売買代金に関する管理口座は、基準日時点の相手先別残高と通帳を照合します。顧客資金と自社資金の混在、長期未精算、案件不明の残高があれば、決済前の是正項目にします。
クロージング条件を免許工程と結ぶ
- 現行免許、変更履歴、処分・指導の有無、保証協会資料を確認する。
- 買い手の拠点計画と必要免許を決め、行政庁・協会へ相談する。
- 進行案件、従業員、賃貸借、システムの移転・継続方法を確定する。
- 必要な免許・届出、専任宅建士の在籍、重要な同意を決済条件に反映する。
- 決済後の標識、帳簿、顧客窓口、広告名義の切替を日付入りで実施する。
免許申請や届出の期限・必要書類は所在地、免許区分、変更内容で異なります。最新の行政庁案内を確認し、行政書士・弁護士等の専門家へ個別に相談してください。不動産仲介業の事業特性は不動産仲介会社のM&Aで解説しています。
不一致を見つけたときの是正順序
登録上の従事者と実際の勤務、広告表示と免許名義、店舗実態と事務所登録、案件台帳と帳簿に不一致があれば、事実確認、影響範囲、行政庁・保証協会への相談、是正、買い手への開示の順で記録します。担当者の推測で過去日付の書類を作ったり、説明前にデータを上書きしたりしないことが重要です。
是正に時間がかかる場合は、対象店舗や案件を譲渡範囲から外す、決済日を調整する、必要手続きを前提条件とするなどの選択肢を比較します。問題の存在だけでなく、営業継続へ与える時間的影響を示すと判断しやすくなります。
免許と案件を一枚の工程表にする
法人・人員・拠点・案件を別々に管理せず、営業を止められない日から逆算します。スキーム選定や候補先への説明で迷う場合は、免許一覧と進行案件表を用意して住宅M&Aの相談窓口をご利用ください。
